元気な人

 近所のスーパーマーケット、深夜のレジで働いている元気な婦人がいる。レジに並ぶ人々に積極的に元気な声をかけている。声をかけるチャンスをいつも逃さないように狙っているようだ。マニュアル通りではない声かけは、いつも不思議な響きをもっている。

 「たくさん食べてね」「はい、どうぞ」。そんな短いかけ声をきっかけにして、つい会話が弾んでしまうお客さんもいる。特に子ども連れのお客さんには、必ず声がかかる。「かわいい服ね」「それ何ぁに?」「これからお家で食べるんだ」。

 この人の声かけは、とにかくタイミングがいい。つい会話に引き込まれてしまう。スーパーで買い物をするというささいな出来事が、一味違った時となっていく。

 一方でそうした会話を嫌がる人もいるかもしれない。早く買い物を済ませたい人は、わずらわしい声となろう。確かに誰とも余計な会話せずに済むのは楽なこともあろう。

 しかし、多くの人がこうした声かけを心のどこかで待っているように見える。その日の仕事を終えて深夜に帰宅途中にある人々の多くは、一人暮らしをしているようだ。これから帰宅しても、明くる日に出勤するまで誰とも会話を交わすことがない人も少なくないだろう。

 誰かとの会話が弾む、しかも不意に話しかけられたのに潤いある対話となって心が和む。人々はそうした後味がよい声、弾む言葉を渇望しているのではないか。誰かに声をかけられて、元気になりたいのではないか。

 ひるむことなく声をかけ続けているあの婦人の姿を見るたびに、礼拝で説教を語る牧師は学ばされること多しなのである。

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